その他のよくある症状・疾患
心雑音とは
聴診器で心臓の音を聞いたときに、通常の心音の他に心臓内の血液の流れが乱れているときこえる音を心雑音といいます。
血管や心臓弁が狭くなっていたり、心臓の壁に穴が開いているなどの心臓の病気による器質性心雑音と、病気ではなく健康なお子さんにも聞かれる無害性(機能性)心雑音があります。心雑音の音の場所や音の性質によって心臓の病気によるものか判断をします。
お子さんの3~5人に1人の割合で心雑音が聞こえるといわれていますが、多くの場合が無害性心雑音です。無害性心雑音は発熱時など心拍が増えたときに強く聞こえることがあります。
心臓の病気が疑われる場合には専門医(小児循環器医)へ紹介をし、胸部レントゲン・心電図・エコー検査などを実施します。
下痢とは
うんちに水分や電解質が多く含まれて柔らかくなった状態を下痢といいます。
泥のような便を泥状便、水のような便を水様便といい、排便の回数や量も増えます。
多くの場合はおなかの風邪であるウイルス感染によるもので、特別な治療はないことが多いのですが、細菌感染による場合は抗生剤などによる治療をする場合もあります。
必要な場合には便の培養検査で原因を調べます。
特に乳児期では腸内細菌叢が未熟なために、感染症による下痢をおこすと腸内細菌のバランスも崩れてしまうために治るまでに2週間以上に長引くこともよくあります。
便は肌に刺激があるため、おむつかぶれにも注意が必要です。汚れたら、おしりふきを使うよりも石鹸をつけてぬるま湯で洗い流し、タオルで押し拭き(こすらない)をしてあげましょう。
感染症以外には乳糖不耐症や食物アレルギーなども長引く下痢症の原因になることがあります。
便秘
何らかの原因によって排便回数や便の量が減った状態を便秘といいます。
便が出ない状態が長く続くと便が腸の中で硬くなり、排便時に痛みや肛門の出血を伴うことがあり、そのことでまた排便がしづらくなり、便秘の悪循環となります。
便秘が長く続くと肛門に「見張りいぼ」ができることがあります。
生まれたての赤ちゃんの腸内は無菌状態です。出生後にビフィズス菌などが腸内に住み着くようになり、3-4歳で腸内細菌叢ができあがるといわれています。
腸内細菌叢はいろいろな菌がいること(菌の多様性)が大切です。適切な量の水分を取り、バランスのとれた栄養をしっかりととること、お子さんにも腸活が大切です。
また排便には腹筋が必要です。赤ちゃんのころから寝返りやハイハイを大切に、しっかりと運動することが便秘予防には大切です。
当院のうんち外来では薬の処方だけでなく、生活習慣の見直しや、栄養相談、サプリメントの提案などをおこない、健康な腸活をサポートします。
鼻出血とは
左右の鼻の間にある壁(鼻中隔)には毛細血管がたくさん集まるキーゼルバッハという場所があり、なんらかの物理的な刺激が原因でその場所が傷つくと鼻血がでます。
一度傷がつくとカサブタのようになるために、カサブタがはがれると出血を繰り返しやすくなります。
とくにアレルギー性鼻炎などがあると粘膜が弱くなっているために鼻出血が出やすくなります。
鼻血が出た場合には座らせて、下を向かせ、鼻をつまみます。
保冷剤などで鼻の部分を冷やすと血管が収縮するので止まりやすくなります。
のどにまわった血液は吐き出させましょう。30分以上止まらないとき、洗面器に溜まるほどのいっぱいの出血がみられるときは受診をしてください。
赤ちゃんの口の中の症状
- 真珠腫 赤ちゃんの歯茎に白い2-3mmの小さな腫瘤(できもの)がみられることがあります。胎児のときに乳歯をつくる組織の一部が残ったもので、痛みなどはありません。
1歳までには自然に消えますので治療は必要ありません。 - 鵞口瘡赤ちゃんの頬の粘膜や舌、唇にミルクかすのような白いものがくっついていて、こすってもとれません。
免疫がまだ弱い赤ちゃんにはよく見られるカビ(真菌)の一種であるカンジダによる感染症です。痛みはなく哺乳も問題はありません。自然に消えることもありますが、必要な場合には抗真菌剤などの薬が処方されます。カンジダによるおむつかぶれが一緒に起こることがあります。 - 舌小帯短縮舌小体とは舌を上に持ち上げたときにみえる粘膜のヒダのことです。生まれつき下の前のほうにヒダがついていると舌の先がひきつれてみえることがあります。舌を出したときに舌がハート形に見えます。哺乳などに問題なければ治療は必要ありませんが、幼児期以降に発音のしにくさなどがおこることがあります。必要な場合には専門医(小児耳鼻科や口腔外科)で部分的に切開をすることもあります。
母斑・血管腫
生まれつき、もしくは生後まもなくからみられる皮膚のアザを母斑といいます。
打撲などでできる内出血のアザとは別のものです。
一部は全身の病気の一部としてあらわれることがありますが、多くの場合は皮膚の一部分に起きた奇形と考えられます。
母斑は茶色いカフェオレ斑、青色の蒙古斑・太田母斑、黒色のほくろ、白色の白斑、赤色の血管腫など色やできる場所によって診断がつきます。
時間がたてば自然に消えるものとレーザー治療が必要なものがあります。
蒙古斑は赤ちゃんのお尻や背中の青あざで、10歳ころまでには自然に薄くなります。
手足やおなかの蒙古斑を異所性蒙古斑といい、消えにくい傾向があります。
赤色の血管腫には、まぶたやおでこにできるサーモンパッチや、うなじや後頭部のウンナ母斑は3歳までには薄く消えていきますので様子を見ることが多いです。
盛り上がりのある苺状血管腫は1歳ころまで大きくなりその後消えていくものが多いですが、大きいものやできる場所によっては治療が必要なことがあります。
盛り上がりのないくっきりとした単純性血管腫はレーザー治療が必要です。
レーザー治療が必要な場合には、専門の皮膚科や形成外科をご紹介いたします。
鼠径ヘルニア
本来はおなかの中にあるはずの腸の一部が足の付け根の鼠径部の筋肉の隙間から皮膚の下に出てくるもので脱腸ともいわれます。
鼠径ヘルニアは泣いたり力んだりして腹圧がかかるとふくらみがみられます。
痛みはありません。自然にひっこむこともありますが、原則は外科的な手術が必要です。
陰嚢水腫・停留精巣とは
陰嚢(たまのふくろ)の中に液体が貯留して膨らんでいるものを陰嚢水腫といます。
生まれたての赤ちゃんにはよくみられるもので痛みはありません。
男の子の精巣(たま)は胎児期におなかの中にあり、陰嚢まで下降していきます。このときに精巣はおなかの臓器を包んでいる薄い膜(腹膜)といっしょに降りてくるために、陰嚢にはおなかの中とつながった膜がはいりこんでいます。
生まれるころには膜が閉じておなかの中とはつながらなくなるのですが、完全に閉じきらないこともよくあります。
そうするとおなかの中にある水分が陰嚢内におりてきてふくらみ、陰嚢水腫となります。
陰嚢水腫の機序は鼠径ヘルニアと同じですが、陰嚢内に降りてくるのが水分だけの陰嚢水腫は自然に吸収されることが多いため1歳ころまでは様子を見ます。
何らかの原因で精巣がおなかのなかから陰嚢内に降りてこないものを停留精巣とよびます。
精巣が触れたり触れなかったりする場合には移動精巣を疑います。移動精巣は年齢とともに陰嚢の中に降りてきますので様子を見ますが、移動性でないものは検査や手術が必要なため泌尿器科に紹介します。
腸重積とは
腸の一部がとなりあう腸に入り込んで閉塞するもので便がとおりにくくなり、腸の血流が悪くなる病気です。
生後3か月から2歳頃までの子どもにおこりやすく、急激で激しい痛みがあるため、赤ちゃんは火が付いたように泣くことがあります。
腸の動きによって痛みが強くなったり弱くなったりするために、急に激しく泣いた後に元気そうになることもあります。
他には嘔吐や血便などの症状がみられる場合があります。
ていねいにおなかを触診すると、腸が入り込んだふくらみを感じることができますが、赤ちゃんが泣いていると診断が難しく、その場合は超音波検査やレントゲン検査で診断をします。
腸重積は腸の血流が悪くなってしまうので、診断されたらすぐに高圧浣腸などの治療が必要です。場合によっては手術となることもあります。
熱性けいれんとは
主に生後6か月から満5歳(60か月)までの乳幼児に発生しやすい、38℃以上の発熱を伴う発作性疾患です。熱性けいれんは未発達な脳が発熱という刺激に過剰に反応することが原因と考えられており、ほとんどの場合、成長と共に5歳頃までに自然に治まります。症状には、手足の震えや全身の突っ張りといった運動性けいれんに加えて、脱力感や反応が鈍くなる一点凝視(ぼんやりとして焦点が合わない状態)、眼球の上転(白目になる)なども一部で見られることがあります。日本では欧米よりも発症率が高く、7~9%程度の子どもが経験するとされています。
熱を出しやすいとは
子どもの発熱は脇の下で測定して37.5度以上のものをいいます。
毎月1回以上の発熱がある場合を「熱をだしやすい」ということが多いです。
乳幼児の原因の多くは感染症を繰り返していることです。
免疫が未熟なお子さんが保育園などで集団生活をはじめたり、きょうだいがいる場合には感染の機会が多くなり、熱を出しやすくなります。
熱のほか咳や鼻水、嘔吐や下痢などの症状がある場合には感染症による発熱と考えてよいでしょう。
生後6か月を過ぎると、おなかのなかでお母さんからもらった免疫が弱まり感染症にかかりやすくなります。生後3カ月未満の発熱は大きな病気が隠れていないか、検査をする必要があります。
感冒症状を伴わない発熱が定期的に起こる場合には尿路感染症(膀胱尿管逆流症や水腎症)や先天性免疫不全症などの自己炎症性疾患を疑い検査をすることがあります。
分院みくりキッズくりにっくには免疫不全症の専門医がおりますのでご心配な場合にはご相談ください。