アデノウイルス
アデノウイルスとは
アデノウイルスは、目、呼吸器、消化器、泌尿器など様々な場所に感染症を引き起こします。このウイルスには血清型が多くあり、免疫がつきにくいため感染が何回も起こる可能性があります。
症状は、ウイルスの型や感染する体の部位によって様々で、以下のようなものがよく知られています。
呼吸器感染症
アデノウイルスが呼吸器に感染すると、呼吸気道系が炎症を起こし、鼻炎、咽頭炎、扁桃炎などが引き起こされます。
人によって異なりますが、主な症状は発熱、喉の痛み、咳、鼻水などです。場合によっては咽頭炎やクループ、気管支炎、肺炎などを起こすケースもあります。登園や登校には、解熱と全身状態の改善が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は、「プール熱」と呼ばれています。
これは、以前は夏の時期に流行することが多かったのですが、最近では季節に関係なく1年を通して流行する可能性があります。
症状として、発熱と咽頭の痛みや扁桃腺の腫れに加え、結膜炎の症状(充血や目やに)がみられるのが特徴的です。
発熱の特徴として、高熱が持続する場合もありますが、1日のうちに39-40℃の高い熱と37℃台の微熱の間を上下することもあり、それが4日~5日程度と比較的長い間続きます。
咽頭結膜熱は学校保健安全法で定められた学校感染症で、登園・登校の停止期間は発熱や結膜炎の症状などが無くなってから2日経過するまでです。
流行性角結膜炎(はやり目)
流行性角結膜炎では、咽頭結膜熱とは違って高熱は出ず、喉の痛みなどもありません。主な症状は白目の充血と目ヤニの増加で、伝染力がとても強力です。
この疾患も学校保健安全法で定められた学校感染症で、移してしまう可能性が無くなるまで登園・登校はできません。
胃腸炎
アデノウイルスによる胃腸炎は、乳児期によくみられます。
主な症状は発熱の他、腹痛や下痢、吐き気、嘔吐といった胃腸症状で、登園や登校ができるようになるのは、症状が良くなってからです。
出血性膀胱炎
出血性膀胱炎の特徴は、排尿時の痛みと血尿です。
尿意が頻繁に起こるという症状がみられることもあります。
アデノウイルスの感染経路
アデノウイルスは、主に咳やくしゃみなどの飛沫や、ウイルスの付着した手指に触れること、またタオルや食器・食べ物の共有やプールでの接触などによって感染します。
アデノウイルスの潜伏期間
アデノウイルスの潜伏期間は2日~14日ほどで、この期間はウイルスの型によって異なります。
代表的なものだと咽頭結膜熱(プール熱)の場合5日~7日、流行性角結膜炎の場合は1週間以上となっています。2週間以上の潜伏期間をもつウイルスの型も存在しており、どうやって感染したかがわからないケースも多いのが特徴です。
感染力は発症する数日前から高くなり、それから数日間は他の人に感染させるリスクが高くなっています。
大人もうつる?アデノウイルス感染症
アデノウイルスは、子どもだけでなく大人にも感染します。
多くの場合、園や学校で感染したお子さんから同居するご家族にうつるので、家庭内で拡大しないために、こまめな手洗いや手指消毒、またタオルや食器・食品を共有しないといった対策をとるようにしましょう。
アデノウイルスの予防方法
①手洗い
感染予防の基本は、流水と石けんを用いた適切な手洗いです。
トイレの後や、食事の前後にはきちんと手を洗うよう心がけましょう。
また、アルコール消毒も効果があるため、活用すると良いでしょう。
②タオルや食器の共有を避ける
アデノウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。
感染した方のくしゃみや咳の他、唾液や鼻水、涙などに触れて感染する恐れもあるため、タオルや食器・食品の共有は避けましょう。
受診の目安
発熱や目の充血といった症状が持続してみられる場合には、アデノウイルスの感染が疑われるため、早めに受診することをお勧めします。
また、アデノウイルスによる感染症では、登園や登校が可能であるか医師の判断が必要となるケースもあります。
検査・治療
アデノウイルスの感染が疑われる場合、検査には迅速抗原検査キットを用います。
この方法は綿棒で喉を擦り、採取した検体を試薬に混ぜて検査を行います。結果の判明まではおよそ10分を要します。
また、症状や周囲の状況を顧みて、アデノウイルス感染が明確である場合には、検査は実施せずに診断するケースもあります。
アデノウイルスに対しては有効な治療薬はないため、基本的には対症療法を行うことになります。
発熱した場合は解熱鎮痛薬、その他の症状(咳、鼻水、咽頭痛など)にも症状を軽減させる薬を処方しますので、内服して安静に過ごしましょう。
充血や目ヤニといった症状に対しては、場合によって痒みを抑えたり、感染を予防したりする点眼薬を処方することもあります。
アデノウイルスに関してよくある質問
アデノウイルスに何度もかかることはありますか?
アデノウイルスは、50種類以上の様々な型があるのが特徴です。
また、様々な部位に感染し、症状も多様なため、一度の感染で免疫がつくことは難しく、繰り返し感染する可能性があります。
どのような初期症状がみられると、アデノウイルスに感染しているかわかりますか?
初期症状でアデノウイルス感染かどうかは、なかなか判断が難しいものです。
特徴的な症状には長く続く高熱や喉の痛み、扁桃につく白苔(膿のようなもの)、白目の充血や目ヤニなどがありますが、これらは必ずしも発症してすぐに現れるとは限りません。そのため、症状の経過をきちんとみるようにしましょう。
また、多くの場合、アデノウイルスの感染症は子どもの間で流行するため、園や学校で流行しているかどうかを知っておきましょう。
アデノウイルスの感染症は何という病名で呼ばれていますか?
アデノウイルスによる感染症では、感染する部位や症状によって病名が様々あります。
それぞれ、主に以下のような症状がみられます。
- アデノウイルス感染症:風邪症状(発熱、喉の痛み、咳、鼻水など)
- 咽頭結膜熱(プール熱):発熱、喉の痛み、結膜炎症状(白目の充血、目ヤニ)
- 流行性角結膜炎(はやり目):結膜炎症状(白目の充血、目ヤニ)
- アデノウイルス腸炎:発熱、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など それに加え、肺炎や咽頭炎、出血性膀胱炎といった症状が起こる可能性もあります。
アデノウイルスで発熱がないということもありますか?
白目の充血や目ヤニなど結膜炎症状や、胃腸症状のみで発熱のないケースもあります。
アデノウイルス感染では、大人と子どもで症状に違いはありますか?
感染したのが大人であっても、症状はほとんど子どもと変わりません。
ですが、感染したのが乳幼児の場合、症状が重くなったり治るまでにかかる時間が長くなったりすることもあります。 大人であっても感染しないということはなく、症状も同様のため注意する必要があります。
しかし、基本的には大人の間ではなく、学校や園など子どもの間で流行する感染症です。
そのため、大人の感染経路は家庭内であることが一般的です。
アデノウイルスにかかった場合、保育園や学校に行けますか?
条件はありますか?
アデノウイルス感染は複数種類があるため、登園や登校の条件はどのように症状が出ているかによって異なります。
咽頭結膜熱(プール熱)では発熱や咽頭痛、白目の充血といった症状が出て、登園や登校は症状が消失してから2日が経過するまで停止となります。また、登園・登校の際は医師の診断と許可証が必要です。
なお、アデノウイルス感染症(白目の充血を伴わないもの)の場合は、熱が下がって全身状態がよくなれば登園・登校ができるようになり、医師の許可証は必要ありません。
流行性角結膜炎(はやり目)の出席停止期間は、医師が感染のリスクがないと認めるまでです。