ウイルス性胃腸炎

ウィルス性(感染性)胃腸炎

胃腸炎は、細菌やウィルスなどの微生物が経口感染して引き起こされる疾患で、汚染されたものの飲食による食中毒や、集団で感染する場合もあります。主な症状としては吐き気や嘔吐、発熱、腹痛などがあげられます。
病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ菌などは、夏に多く、重症化することもある細菌性の胃腸炎としてよく知られています。
一方、ノロウィルスやロタウィルスはウィルス性の胃腸炎としてよく知られ、流行時期は春から冬にかけてです。乳幼児が感染すると重症化しやすいため、注意するようにしましょう。
今回解説するのは、ウィルス性胃腸炎についてです。

ウィルス性(感染性)胃腸炎

ロタウィルス胃腸炎
(感染経路・潜伏期間)

ロタウィルス胃腸炎とは

ロタウィルス胃腸炎は乳幼児冬季下痢症や白色便性下痢症とも呼ばれ、乳幼児の下痢症では最もよくみられる感染症でした。しかし、近年はワクチンが開発され、定期接種になったためかかる人数は減少し、重症化することも減ってきました。かつては便が白色になることもありましたが、それがみられることも少なくなっています。
主な症状は吐き気や嘔吐、下痢の他、重症になると脱水症を引き起こすこともあります。多くの場合、3日~8日程度で症状が良くなります。
感染は2回以上起こることもありますが、2回目は重症になりにくいといわれています。

ロタウィルス胃腸炎の感染経路

ロタウィルスの感染経路は主に経口感染と接触感染です。感染した子どもの嘔吐物や便によって汚染された手や衣類が感染を拡大させるため、そういった汚染物を適切に処理する必要があります。また、ウィルスは感染した子どもの周囲の机やおもちゃの表面にも付着するため、注意するようにしましょう。

ロタウィルス胃腸炎の潜伏期間

ロタウィルスの潜伏期間は1日~3日程度です。
発症から4日~5日程度は感染のリスクが高く、症状が良くなった後も排泄物からウィルスの排泄は数週間程度継続するため、注意しましょう。


ノロウィルス胃腸炎
(感染経路・潜伏期間)

ノロウィルス胃腸炎とは

ノロウィルスの特徴は、突然発症する嘔吐の他、それに続く水のような下痢や腹痛などがあげられます。胃腸症状に加えて発熱や倦怠感、頭痛、筋肉痛などが現れることもあり、症状は1日~3日程度続くことが多いです。

ノロウィルス胃腸炎の感染経路

ノロウィルスの感染経路は経口感染と接触感染です。
感染した子どもの嘔吐物や便によって汚染された手や衣類が感染を拡大させるため、そういった汚染物を適切に処理する必要があります。さらに、「飛沫核感染」といって、乾燥した嘔吐物が空気中に浮遊し、それを吸い込むことで感染するケースもあるため、注意するようにしてください。
また、ウィルスは感染した子どもの周囲の机やおもちゃなどの表面にも付着し、それに触れることで感染することもあります。
その他、牡蠣などの2枚貝を食べて感染する場合もあります。

ノロウィルス胃腸炎の潜伏期間

潜伏期間は比較的短く、12時間~48時間程度です。
症状が良くなった後も、排泄物からのウィルス排出は数週間程度続くため、注意するようにしましょう。


ウィルス性胃腸炎の予防方法

予防方法は、ロタウィルスでもノロウィルスでも同様です。

①手洗い・うがい

家に帰った後や調理・飲食の前後の他、感染した方の汚染物を処理した後は特に入念に、流水と石けんを使って手を洗うようにしましょう。

②アルコール消毒は無効

ロタウィルス、ノロウィルスにはアルコール消毒はあまり効果がありません。これは、この2つのウィルスが「ノンエンベロープウィルス」と呼ばれる、アルコール消毒や熱に強いウィルスであるためです。
ロタウィルスやノロウィルスには、次亜塩素酸ナトリウムを使って消毒を行うようにしましょう。

③適切な汚物処理

※準備中です。

④ワクチン接種(ロタウィルス)

ロタウィルスにはワクチンがあり、定期接種が開始してから、乳幼児のロタウィルス感染症は大幅に減少し、入院するほどの重症化も少なくなってきました。
日本で承認されている経口ロタウィルスワクチンには、1価と5価の2種類があります。初回接種を生後6週~14週6日までに行い、1価であれば合計2回、5価であれば合計3回接種するようにしましょう。
ノロウィルス胃腸炎の有効なワクチンはまだ開発されていません。


受診の目安

嘔吐が激しく、飲食ができないときや尿が濃い・半日以上出ない・量が少ないとき、泣いても涙が出ないといった場合は脱水症が疑われます。このような場合はすぐに受診するようにしてください。また、生後6か月未満である場合や早産・低体重児、基礎疾患がある場合なども脱水になる可能性が高いため、早めに受診することをお勧めします。


診察・検査・治療

ロタウィルスやノロウィルスには、有効な薬がありません。そのため、検査による原因ウィルスの特定は必ずしも必要というわけではありません。多くの場合、脱水を防ぐために水分摂取に気を付けながら、症状が良くなるのを待つことになります。
診察では脱水が起きていないかを確認し、制吐剤や整腸剤の処方を行います。脱水症状が強い場合は点滴が必要になることもあります。


ウィルス性胃腸炎に関して
よくある質問

汚物処理はどのように行えばよいですか?

嘔吐物や排泄物には、ウィルスが大量に存在していると考えられます。
そのため、周囲への感染拡大を防ぐためにも迅速かつ適切に処理をするようにしましょう。
また、清掃後は必ず消毒を行ってください。以下、汚物処理方法について記載します。

●準備するもの

塩素系漂白剤調製液

塩素系漂白剤を0.1%(1000ppm)まで水で薄めた塩素系漂白剤調製液を準備します。
以下は、0.1%(1000ppm)の塩素系漂白剤調製液を生成する際の比率です。
(※使用する漂白剤は市販の約5%濃度のものとする)

水量 1L 3L 5L 10L
漂白剤原液 20ml 60ml 100ml 200ml

漂白剤調製液には、衣類を漂白する作用があります。
脱色される可能性がある衣類に使用する際は、できるだけすばやく処理するようにしてください。

くつカバー(1足)

ビニール袋で代用できます。床に付いた汚物を直接踏まないために使用します。

手袋(2重):両手で4枚

汚物が手に付いてしまうと、2次感染が起きる可能性があります。
2次感染を防ぐために、2重にして使うと感染対策が強化できます。

ガウン、またはエプロン1枚

ビニールなどの水分が染みない素材でできていて、膝より下まで丈のあるものを使用しましょう。

ペーパータオル(20枚程度)

枚数は、汚物を拭きとれる程度用意するようにしてください。汚れていない、白い雑巾で代用できます。

ゴミ袋(大2枚)

ゴミ袋を捨てる際に2重にできるよう、2枚用意するようにしてください。

マスク1枚

汚物を処理する際に、ウィルスを吸い込まないために使用します。

参照:おすすめセット

●汚物処理の際のポイント6つ

  1. 個人防護具(使い捨ての手袋やマスクなど)を身に着ける。
  2. 汚物には、処理する人以外は近づかない。
  3. 次亜塩素酸ナトリウムなど有効な消毒剤を使用する。
  4. 換気をきちんと行う。
  5. 壁や床は、広範囲の清掃を行う(ウィルスの飛散範囲は広く、また高く舞い上がるため)。
  6. 処理を行った後は、2回以上の手洗いとうがいをする。また、可能ならすぐに着替えて、着ていた服の洗濯をすること。

引用:SARAYA

嘔吐物が衣類に付着してしまった
場合の処理

●準備するもの

塩素系漂白剤調製液

塩素系漂白剤を0.02%まで水で薄めた塩素系漂白剤調製液を準備します。
以下は、0.02%の塩素系漂白剤調製液を生成する際の比率です。
(※使用する漂白剤は市販の約5%濃度のものとする)

水量 L 3L 5L 10L
漂白剤原液 4ml 12ml 20ml 40ml

漂白剤調製液には、衣類を漂白する作用があります。脱色される可能性がある衣類に使用する際は、できるだけすばやく処理するようにしてください。

●衣類洗濯時の際のポイント4つ

  1. すぐに洗えない時の処理方法
    嘔吐物が衣類に付着してしまった際は、できるだけ早く処理するようにしましょう。
    まず、ゴム手袋を着けた上で、紙タオルなどを用いて嘔吐物を除去します。
    衣類は、周囲にウィルスを飛散させないため、ビニール袋などに入れて密封してください。
  2. 下洗いをする
    衣類を冷水で流すか、水道水で軽く洗い流して嘔吐物の一部を取り除きます。
    こすらずに軽く揉み洗いをするようにしましょう。その際、服の水が飛ばないように気を付けてください。
  3. リネン類の消毒
    消毒は、0.02%の塩素系漂白剤調製液で行うようにしましょう。
    よくすすぎ、乾燥機などを使って高温で乾かすことで殺菌効果を高めることができます。
    なお、付着したのが布団などですぐに洗濯するのが難しい場合は、嘔吐物などが付着した部分を乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使用すると殺菌することができます。
  4. 洗濯した場所の清浄化
    下洗いを行った洗面台なども消毒が必要です。0.02%の塩素系漂白剤調製液を用いて消毒を行い、その後に洗剤を使用して掃除をするようにしましょう。

下痢がなかなか治まりません。
登園再開はいつから可能ですか?

特にロタウィルス胃腸炎にかかった場合、下痢症状がなかなか治まらないケースがあります。
熱が下がり、嘔吐の症状が無く、いつもと同じように食事がとれて元気がある場合は、ある程度便が緩くても登園することができます。
ただし、便が緩くてオムツから漏れてしまう場合や、量や回数が多すぎる場合には、他のお子さんに感染させてしまう可能性があるため、もう少し症状が良くなるまでは登園を控えるようにしてください。

母乳やミルクはあげても大丈夫ですか?
薄める必要はありますか?

母乳やミルクをあげても問題はありません。
薄めずにいつも通りあげてください。

離乳食などはやめるべきですか?

長い期間食事を制限することに、下痢の期間を短縮する効果はなく、体重の回復を遅くしてしまいます。
そのため、嘔吐が治まったら、できるだけ早くいつもと同じ食事をさせてください。

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