気管支喘息

子どもの気管支喘息

気管支喘息の症状では、息をすると気管支から「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれる、「ヒューヒュー、ゼーゼー」というような音が聞こえます。
また、呼吸困難が繰り返し起こることもあります。
このような症状の原因は、気道(空気の通り道)に繰り返し炎症が起こることで気管支が狭くなるためです。
ただし、子どもは気道が十分発達していないため大人と比較してもともと狭く、風邪をひいただけでも喘鳴が聞こえるケースもあります。
ヒューヒュー、ゼーゼーというような音が聞こえる、呼吸が苦しそうといった場合には、状態を確認しますので当院を受診ください。

子どもの気管支喘息

気管支喘息の診断では、以下のようなポイントをチェックします。

  • 喘鳴があり、咳や呼吸困難が繰り返し起きているか
  • 運動や呼吸器感染症、アレルゲンの吸入、気候の変動が原因で症状が出るか
  • 本人や家族にアレルギー疾患があるかどうか

喘息発作

喘息発作が起きると、気管支の周りの筋肉の収縮、気管支の粘膜の腫れ、むくみ、痰の増加などによって空気の通る道が狭まります。喘鳴は、その細くなった道を空気が通ろうとするために生じる音です。
以前は、薬の吸入や内服で気管支を拡張させて発作を抑えるという治療法でした。
しかし、近年の研究で、アレルギーなどによる慢性炎症が気管支喘息と関わっていることが明らかになりました。
そのため、現在では慢性炎症に対する治療を行うことで、発作そのものが起こらないようにする治療が実施されるようになっています。
呼吸器の正常な発達のためにも、発作自体を起こさないということが大切です。

喘息の重症度

喘息の重症度は、治療を行うにあたり、4段階のうちどの程度かを判断します。
間欠型→軽症持続型→中等症持続型→重症持続型と重くなります。
これは発作の激しさだけでなく発作の頻度、症状の強さ、夜間の症状、呼吸機能(数値化したもの)などを基準に評価されます。

症状のみによる重症度
(見かけ上の重症度)
現在の治療ステップ考慮した
重症度(真の重症度)
治療
ステップ1
治療
ステップ2
治療
ステップ3
治療
ステップ4
間欠型
年に数回、季節性に咳嗽、軽度喘鳴が出現する。時に呼吸困難を伴うこともあるが、β2刺激薬の頓用にて短期間で症状は改善し、持続しない。
間欠型 軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
軽症持続型
咳嗽、軽度喘鳴が1回/月以上、1回/週未満。時に呼吸困難を伴うが、持続は短く、日常生活が障害されることは少ない。
軽症
持続型
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
中等症持続型
咳嗽、軽度喘鳴が1回/週以上。毎日は持続しない。時に中・大発作となり日常生活や睡眠が障害されることがある。
中等症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型
重症持続型
咳嗽、喘鳴が毎日持続する。週に1~2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害される。
重症
持続型
重症
持続型
重症
持続型
最重症
持続型

(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020を基に作成)


喘息が悪化する要因

喘息のある子どもは、花粉、ハウスダスト、ダニなどに対するアレルギーを持っていることが多く、アレルギー症状が悪化を招くことがあります。
また、風邪や気圧、天候の変化、煙草の煙や冷たい空気なども喘息を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
基本的に喘息は、発作を起こさないようにすることが大切なため、悪化に関わる要因をきちんと把握しておきましょう。

アレルゲン

アレルゲンは、喘息を悪化させる原因の1つです。ダニやハウスダスト、カビ、ペットの毛、フケなどのアレルゲンを吸い込むことで、気道でアレルギー反応が起こり、炎症が生じて症状の悪化を招きます。
こまめに掃除をし、室内環境を整えてハウスダストやダニが発生しにくいように対策を行いましょう。
アレルゲンが何であるか確かめるため、血液検査を実施する場合があります。

アレルギー相談へ

感染症

ほとんどの場合、風邪はウィルスによって引き起こされる感染症です。ウィルスに感染すると上気道を中心として炎症が生じますが、これが喘息発作を引き起こすケースがあります。
普段から風邪をひかないための対策を行い、風邪をひいてしまった場合は悪化しないよう気をつけることが喘息発作を防ぎます。

運動

運動が原因で引き起こされる喘息の発作を運動誘発喘息と呼びます。これは、冷たい空気が気道に入ることが刺激となって生じる発作のため、寒い時期は特に起こりやすく、温水プールでの水泳などでは起こりにくいといわれています。
軽い運動では発作が起きない場合でも、重い運動(長距離走)で発作が起きてしまうケースもあります。
ただし、運動誘発喘息があっても運動が禁止されるわけではなく、発作を防ぐための治療を適切に継続すれば、できる運動は増えていきます。
運動誘発喘息については、学校に行っている間などに発作が起こっていてもご家族に伝わっていない場合もあるため、診察の際の丁寧な問診が重要です。

気象条件

朝と夜の温度差が大きい、湿度が低く乾燥している、台風が近づいているといった気象条件(温度、湿度、気圧など)の変化も、発作が起こりやすくなる原因の1つです。

大気汚染

喘息の場合、気道が過敏になっているため、大気汚染物質などがさらなる刺激となり、発作を悪化させる原因となることがあります。大気汚染物質としてよく知られているPM2.5の他、線香や花火などの煙も刺激物質になる可能性があります。
もちろん、煙草の煙も喘息発作を起こす原因となりますので、喘息を持っている方がいらっしゃるご家庭では、煙草は吸わないようにしましょう。どうしても禁煙できないという場合は、煙草は外で吸うようにして、喫煙後は患者様に接するまでしばらく時間を置くようにしてください。

ストレス・疲労・睡眠不足など

疲労や寝不足、強いストレスも発作を起こしやすくする原因の1つです。


気管支喘息の治療方法

当院での気管支喘息の治療は、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023に基づいて実施しております。
薬物療法では、『長期管理薬(発作が出ないための予防の薬))と『発作治療薬(発作が起きた時に抑える薬)』を用います。

発作時の治療

発作が起きた際は、症状を抑えるために気管支拡張薬やステロイドなどを用います。
使用する薬は、発作の程度によって判断いたします。

以下のような場合、強い喘息発作が起きています。
1つでも当てはまるときはすぐ受診ください。

生活の様子

  • 歩行、会話、遊びができない
  • 食事がほとんどできない
  • 横になれない、睡眠がとれない

全身の様子

  • 唇や爪に赤みがなく、顔色が悪い
  • ぼーっとしている、もしくはいつもより興奮している

呼吸や脈の様子

  • ゼーゼーしていることが明らかに分かる
  • 呼吸をする際、小鼻が開く、喉や肋骨の間などがはっきりとへこむ
  • 脈が速い

長期管理

喘息では、発作が起こらず、問題がないように思える時期であっても管理を続けることが必要です。
発作の起きていない期間が、1週間~数か月以上と徐々に長くなっていき、それが継続すれば薬を減らすなどの対応ができるようになります。患者様一人ひとりによって状況が異なるため、月に1回程度定期診察を受け、どういった治療を行うか決めていく必要があります。
小児気管支喘息の長期管理に用いる薬にはLTRA(ロイコトリエン受容体拮抗薬)やICS(吸入ステロイド薬)などがあり、どれを使用するかは治療ステップによって判断します。

評価項目 コントロール状態
良好
(すべての項目が該当)
比較的良好 不良
(いずれかの項目が該当)
軽微な症状 なし (≧1回/月)<1回/週 ≧1回/週
明らかな喘息発作 なし なし ≧1回/月
日常生活の制限 なし なし(あっても軽微) ≧1回/月
β2刺激薬の使用 なし (≧1回/月)<1回/週 ≧1回/週

(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020を基に作成)

コントロール状態での長期管理の進め方

コントロール状態における長期管理の進め方

(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020を基に作成)

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