RSウイルスとは
RSウイルスとは
RS ウイルスは急性細気管支炎の主たる原因ウイルスで、2 歳までにほとんどの子ども等が感染します。
主な症状は、発熱、鼻水、痰の絡んだ咳などで、おおむね 1~2週間程度で徐々に改善していきますが、2 歳未満の乳児の場合、症状が出始めて数日後にゼーゼーやひどい咳などの気管支炎症状が出る事があります。
特に下記に示す重症化リスクの高い子どもや新生児、1 歳未満の乳児が感染した場合は、肺炎や細気管支炎などを引き起こし、呼吸困難で入院が必要になってしまうケースもあるため注意するようにしましょう。
重症化するリスクの高い子ども
- 生後6か月未満、特に生後4週未満の新生児
- 早産・低出生体重の乳児
- 先天性心疾患
- 慢性肺疾患
- 免疫不全症
- ダウン症
RSウイルスの感染経路
RSウイルスは主に、感染した方の咳やくしゃみで飛散したウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」と、ウイルスの付着したものに触れることによる「接触感染」で感染します。
RSウイルスは、テーブルやドアノブ、スイッチなどの表面で数時間も生存できるため、それらに触れた手で目や鼻、口などを触らないよう注意が必要です。
RSウイルスの潜伏期間
RSウイルスは2日~8日(ほとんどは4日~6日)が潜伏期間です。
発症している間は他の人にうつすリスクがあります。発症から 3~8 日は特に症状が強く、感染リスクも高くなっています。
また初感染の場合、RS ウイルは発症から 10-14 日間ほど鼻水や痰などにウイルスが存在し、さらに、月齢の低い子どもの場合では、3週間~4週間程、排出され続けることが報告されているため、注意が必要です。
RSウイルスは大人にも感染する?
RSウイルスは何度も感染する可能性があり、大人にも感染します。
しかし、大人の場合、軽い風邪の症状で済むことが多く、風邪と診断されることがほとんどです。
RSウイルスの予防方法
RSウイルスの感染は、飛沫感染と接触感染によって広がります。
以下のような対策を行って予防するようにしましょう。
① 手洗い
お子さんでも大人の方でも、感染予防の基本は手洗いです。
家に帰った後や調理、食事の前後にはきちんと手を洗うことを徹底しましょう。
また、アルコール消毒も有効なため、活用すると良いでしょう。
② マスクの着用
咳や鼻水といった症状がある方は、周囲に感染を拡大しないためにも、マスクを着用するようにしましょう。
③ お子さんが使用するおもちゃや触れた場所などの消毒
RSウイルスの感染は、保育園や幼稚園で拡大しやすくなっています。
そのため、お子さんが使用するおもちゃや触れた場所を消毒するという対応は有効だといえるでしょう。
アルコール系消毒薬や次亜塩素酸ナトリウムの他、熱による消毒も効果があります。
よく手の触れる場所(手すりやスイッチなど)をこまめに消毒するようにしましょう。
④ シナジス接種
シナジスは、RS ウイルスに対する特異的抗体で、接種により RS ウイルスが体内で増殖することを防ぎ重症化を抑える薬です。
流行期に月 1 回筋肉注射を継続して行います。
このお薬は全員が接種できるわけではなく、重症化リスクの高いお子さんに対してのみ保険にて接種ができます。
受診の目安
- 呼吸が苦しそう
- 胸がペコペコしている、シーソーのような呼吸をしている(陥没呼吸)
- 母乳やミルクをあまり飲まない
- ゼーゼーしていて、眠れない
検査・診察・治療
診察では、細気管支炎や肺炎の徴候を確かめるために聴診を行い、状態に応じて酸素濃度を測ることもあります。
必要な場合は呼吸状態を評価するために酸素濃度を測ることもあります。
検査は鼻と喉の奥の粘膜を、鼻から入れた細い綿棒で拭って行う鼻咽頭ぬぐい液という方法で行います。
当院では、検査に「BioFire SpotFire R パネル(多項目PCR検査)」を使用しておりますので、原因ウイルス・細菌がすぐにわかります。
また、この検査も保険適応が限られていますので、当院では、基礎疾患があるなど重症化リスクの高いお子さんや1歳未満の乳児のみに行っております。
RSウイルス感染症には特効薬がなく、鼻水や咳を軽くする薬、解熱薬を用いた対症療法を行って症状が改善するのを待つことになります。
ゼーゼー、ヒューヒュー、という喘鳴が強い場合には気管支拡張薬を吸入することもあります。
RSウイルスに関してよくある質問
RSウイルスに感染したら、保育園にはいつから行けますか?
RSウイルス感染症では、はっきりと休まなければいけない期間が決められているわけではありません。
診断がついた場合、少なくとも熱が下がって咳や鼻の症状が落ち着くまでは家で安静にするのが良いでしょう。
このルールは園によって違う場合があるため、それぞれの園に事前に確認しておくことをお勧めします。
RSウイルス感染症はどうすれば早く治りますか?
RSウイルスには特効薬が存在しないため、大切なのは水分と栄養、そして睡眠を十分とることです。
また、この感染症の特徴は鼻水や痰といった分泌物が多いことであるため、鼻吸引の機械などをお持ちであれば、こまめに吸引することも効果が期待できます。
RSウイルスの症状はいつ頃がピークですか?
RSウイルスは、一般的に発症後3〜5日目に症状のピークを迎えることが多いです。
また、RSウイルスの流行時期については、今まで、夏から増え始め、秋から冬(11〜1月)にピークを迎えるのが一般的でした。
しかし、2021年以降は感染拡大のパターンが変わり、春から初夏にかけて感染者が増加し、夏にピークを迎える状況が続いています。
2024年においても、1月~3月辺りまでの状況だと、継続的に増加してきており、各年と比較しても感染者数は増加傾向がみられているため注意が必要です。
RSウイルスの治りかけの症状はどのようなものでしょうか?
- 体温が38℃以下に下がる
- 鼻水が透明でさらさらした状態から、白っぽく濁り、粘り気が出てくる
- 咳の痰が減り、ゼーゼーした音が少なくなり、咳の頻度も下がる
ただし、症状が軽くなっても、以下の点に注意して過ごしましょう。
- 水分補給をしっかり行う
- 完治するまで無理をさせず、十分に休ませる